近年、様々な分野において、金属を利用する研究が劇的に変化し、化学に対する異分野からの先進的な研究の展開が望まれている。例えば、金属表面を利用した分子の組織化、金属イオン集積体の固体物性や理論計算、さらには金属微粒子を使った蛋白質の一分子計測等が進められており、金属の結合性や配位環境を自在に活用した新しい分子集合体の機能化や、分子集合が形成する特異な場による金属物性(イオン、クラスター、表面、固体)の化学的制御は、物理や生物との先端学際領域における素材分子の提供だけではなく、日本のエレクトロニクスやバイオテクノロジーを支える基幹技術としても今後ますます重要となってくる。つまり、金属と分子集合体の関係を原子・分子レベルで化学的に理解し、機能化につなげることこそが、次世代に求められている新しい化学の領域と考え、錯体化学、高分子化学、有機合成化学、蛋白質化学、表面化学、超分子化学、クラスター化学の連携によって、従来の枠組みをこえる新領域「金属と分子集合」の創成を目指す。
設置の経緯は化学と工業2008年4月号をご覧ください(2008年6月9日)